指す将順位戦B3三回戦:対lldさん

角換わり4八金2九飛型

 指す将順位戦はここまで1勝1敗,「三回戦も勝って勢いに乗りたいところ」なんて言われる成績である. ちなみに,2勝ならば「このまま全勝で突っ走りたいところ」,2敗ならば「ここで勝って流れを断ち切りたいところ」と言われるわけである.

 さてlldさんなのだが,居飛車党で相居飛車は角換わり・相掛かり・急戦矢倉を指すという,一手損角換わりを指さない点を除けば私と同じである. ありがたいことにウォーズのIDを公開してくれていたので棋譜を嘗め回すように見たが,角換わりが多めで,その中でも4八金2九飛型(以下ポナ流)がほとんどだった. そして対局日の2月5日は棋王戦の第1局で,偶然にもその将棋はポナ流であった. 浮かむ瀬にポナ流で気になる局面を色々と検討させたのだが,先手番の場合千田六段のように指す(腰掛けずに▲4六角を打つ)のがベストだ!と思って対局に臨んだわけである.

角換わりじゃないじゃないか!騙された!

初手からの指し手
▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角
▲4八銀(第1図)

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 初めて先手番を引いた. 私は▲2五歩を決めてしまう人なので,△3三角▲4八銀から角換わりになるのは予定通り. 最近は2五に桂を跳ねる展開にならないので,飛車先を決めてしまっていることはあんまり気にならない.

第1図からの指し手
△5二飛(第2図)

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アイエエエ!?ナカビシャ!?ナカビシャナンデ!? と一瞬びびったが,いわゆるアレである,研究はずしである. まぁもうこうなった以上は仕方ない,いつも通りの中飛車対策をするしかない.

居合い抜き超速

第2図からの指し手
▲6八玉△6二玉▲3六歩△3二銀
▲3七銀(第3図)

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 私の中飛車対策はいつも居合い抜き超速である. 角道を開けない超速という言い方もするが,私は村山七段命名の居合い抜きという呼び方が気に入っている. 第3図のように,角道を開けずに銀を4六に出て行こうとしたわけだが.

第3図からの指し手
△4四歩(第4図)

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 いわゆるノーマル中飛車というやつである,角道を止めてきた. ノーマル中飛車に対して銀を4六に出ると,そのうち△4五歩と追い返されるので,仕方なく穴熊に組みに行く方針に変更した.

変更した方針の変更

第4図からの指し手
▲5八金右△7二玉▲7六歩△5四歩
▲6六歩 △6四歩▲7八玉△6二銀
▲7七角 △7四歩▲6七金△6三銀
(第5図)

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 さて,穴熊を組みに行くことにしたわけだが,またも方針の変更を余儀なくされる. 駒組みを見て「木村美濃か?」とも思ったが,第5図を見てわかる人はわかるであろう,風車だ.

 風車は元々右玉的な発想の戦法で,穴熊に対してバランスで対抗してやろうという戦法なのだが,最近阿部光ー近藤誠戦で光瑠六段が穴熊潰しの速攻を仕掛けた将棋があった. 感想戦で話を聞くと,lldさんはそれにあこがれて風車の作戦を選択したそうである. 私もそれを察して穴熊に組むのをやめて急戦で行くことにした. 二度目の方針変更である.

錯覚

第5図からの指し手
▲4六銀△4三銀▲1六歩△9四歩
▲9六歩△6二金▲6八銀△7三桂
▲3五歩(第6図)

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 結局急戦で行くことにしたので,玉の囲いはそこそこに▲3五歩と仕掛けた. 対ノーマル中飛車の知識は「羽生の頭脳2」で読んだくらいなので,角頭攻めればいいでしょ的な認識である.

第6図からの指し手
    △同 歩▲2六飛 △3四銀
▲5六歩△4五歩▲5七銀引△5五歩
▲4六歩△6五歩(第7図)

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 △3五同歩に▲同銀と行く予定だった. それでよかったのだが,対局時は5筋の位を取っていない効果で△4五歩から△5五角と覗かれる手がどうしても気になってしまった. この△5五角と覗かれる手は,こちからガンガン攻めれば指す暇がなく有り得ない手なのだが,当時なぜか気になってしまって,▲2六飛と浮くことで飛車を先逃げした. わけわからん.

ここから4筋から6筋の歩を連続で突かれ,第7図はもう一気に押しつぶされそうである. あ,でも歩が3つぶつかったから初段だやったぁ!!

もうだめだぁ・・・おしまいだぁ

第7図からの指し手
▲2四歩△同 歩▲3七桂△5六歩
▲同 銀△6六歩▲同 角△同 角
▲同 金△4八角(第8図)

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 第7図から▲2四歩と指して,歩が4枚ぶつかった. これはもう四段くらいあると言っても過言ではない(過言).

 浮かむ瀬先生に△5六歩に▲同金と取れば互角だと後で言われたのだが,▲同銀と取ってしまったのでもう遅い. ズバっと進めて第8図,金桂の両取りが掛けられてなんかもうダメである.

第8図からの指し手
▲5三歩△同 飛▲4四角△6六角成
▲同 角△5六飛▲5七銀△6六飛
▲同 銀△2五歩▲6四歩(第9図)

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 もうここまで悪くなってしまったら仕方ない. 両取り逃げるべからずで飛車先を叩き紛れを求める. ▲5七銀のところは「えいや!」と▲1一角成の方が嫌だったと言われた,確かにそう思う. そして第9図の▲6四歩はもう最後のチャンスである. 取ってくれれば飛車のコビンが開いて色々ありそうだったが.

第9図からの指し手
△2六歩▲6三歩成△同 金▲4四角
△5三銀▲1一角成△3八飛▲5八香
△5七歩(第10図)

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 なんやかんやあって第10図. 飛車を打って合駒をされたら,その駒を歩で攻めるという後手にしたら理想的な展開. こういう展開になったら将棋はだいたい終了である.

将棋ウォーズなら・・・

第10図以下の指し手
▲同 銀 △5六歩 ▲4七銀△3七飛成
▲5六銀右△6八歩 ▲同 玉△6四桂
▲1二飛 △6二金打▲6七銀△4六歩
▲4八歩(第11図)

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 私は24でR700前後な割にはウォーズ二段である. というのも不利な局面になったら第10図以下の指し手のように,攻めと受けとふわっとした手を織り交ぜ,相手に時間を使わせて悪手を誘発することでまくることがまぁまぁできるからである. しかし本局は15分60秒なので当然時間切れはない,なかなか間違えてくれない.

第11図以下の指し手
    △2三銀▲2二飛成△3二銀
▲5四歩△同 銀▲2一馬 △5六歩 (第12図)

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 △2三銀から馬の利きを止めにこられてもう参った. そして安定の歩で攻められる展開である,きつい.

第12図以下の指し手
▲6六銀右△6五歩 ▲7七銀△8五桂
▲3二馬 △7七桂成▲同 玉△3二金
▲同 龍 △6六歩 ▲5七歩△6七歩成
▲8六玉 △8四歩(第13図)

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 これが四面楚歌というやつである. 将棋は逃げる空間,受け駒を埋める空間がなくなれば受からない. あとは「頓死してくれ!」と祈るのみ.

第13図以下の指し手
▲5一銀 △8五銀▲9七玉△7六桂
▲6二銀成△同 金▲8二金△6三玉
▲6四金 △同 玉▲6二龍△6三歩
まで118手で後手の勝ち

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 △7六桂と跳ばれて必至. ここで詰ませば私の勝ちなわけだが,さすがに詰まない. 悔しいが,△6三歩の局面で投了した.

大反省

 なかなかひどい敗戦だったと思う. 一発悪手を放って,そのままひっくり返せず負けというのは楽しくない(). これから私と対局する人,研究はずしをすると相当効くみたいですよ?

 これで私は1勝2敗,「次戦は勝って五分の星に戻したいところ」なんて言われるわけである.